ベトナムのタピオカ市場2025年：グローバルブランドが知っておくべきこと

ベトナムの飲み物といえば、まず「コーヒー」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実は、
ベトナムには古くからお茶文化が根付いています。近年、その伝統に現代的なアレンジが加わった
「タピオカティー（ミルクティー）」が若者を中心に大人気となり、単なる飲み物を超えてコミュニケーションや
ライフスタイルの一部として定着しています。

2025年、ベトナムのタピオカ市場規模は約1億9,000万米ドルに達し、今後も年間20％以上の成長が予測されています。
2031年には6億米ドル超へ拡大する見込みです。急速な成長に伴い、国内外のブランドが次々と参入し、
激しい競争環境となっています。そのため、成功の鍵は「スマートなローカライズ」「創造的なマーケティング」
「強いブランドデザイン」にあります。

味の嗜好：濃厚なお茶フレーバーが主流に

近年、大きな変化のひとつはフレーバーの好みです。ベトナムではたくさんの甘味料を加えた非常に甘い飲み物が
好まれてきましたが、最近では過剰な甘さから離れ、本格的で濃いお茶の味わいを求める消費者が増えています。
この流れによって、茶葉そのものの豊かさを強調する「Phê La」や「Phúc Long」といったローカルチェーンが
台頭しています。ミルクティーは、多くの人にとって「伝統的なお茶の味をしっかり楽しみつつ、現代的な飲み物を味わえる」
絶妙なバランスの飲み物として位置付けられています。

主なベースはウーロン茶、ジャスミン茶、緑茶などで、これはベトナムの伝統的なお茶文化とも通ずるものがあります。
同時に、グローバルなトレンドも市場に影響を与えています。たとえば、世界的に人気の高い抹茶はベトナムでも
瞬く間にベストセラーとなりました。これは、現地の消費者が新しい味に積極的である一方で、品質や本物感を
重視していることを示していると言えるでしょう。

味を超えて：ブランドストーリーの力

現在のベトナムの消費者は、カップの中身だけでなく、それを提供するブランドそのものにも注目しています。ブランドの背景はこれまで以上に重要であり、茶葉がどこから調達されているのか、ブランドが地域社会にどう貢献しているのかといった点が問われています。

ローカルブランドの中には、北西部の茶農園から茶葉を調達し、農家や恵まれない地域を支援することで強い共感を
得ている例もあります。こうしたストーリーテリングは、強いロイヤルティを生み出し、ローカルブランドに優位性をもたらしています。

 

[ローカルブランド「1000M」シャントゥエットが、ベトナム北西部に結びついたストーリーで人々の心をつかむ]

グローバルブランドがベトナムの飲料市場に参入する際には、意味のあるストーリーを語り、自社の製品がベトナムの文化や
人々とどのようにつながるのかを示すことが、ローカライズ成功のための重要なカギとなります。

クリエイティブなデザインと体験の重要性

ブランドを差別化するもうひとつの要素はデザインです。ベトナムでは、ミルクティーは単なる飲み物ではなく
体験そのものでもあり、パッケージ、店舗デザイン、メニューの見せ方など、あらゆる要素がブランドの印象を形づくります。

デザイン性の高いカップや居心地の良い店舗は、飲み物をより魅力的にし、SNSでシェアされやすくなります。
特に若い世代にとっては「SNS映え」が購買動機となるため、こうした工夫は欠かせません。グローバルブランドにとっても、
デザインはローカルとのつながりを生むチャンスです。ベトナムの文化やライフスタイルを取り入れた小さな工夫が、
現地の消費者に親しみやすさを与えます。

Local brand Phê La’s packaging

ベトナム市場での競争の乗り越え方

ベトナムの飲料市場は競争が非常に激しい環境です。KOIやMixueのようなグローバルチェーンに加え、Phúc LongやPhê La
といった強力なローカルブランド、さらには小規模なブティック店や屋台までが市場に参入しています。
中国から入ってきた「ネギ入りミルクティー」のような奇抜なフレーバーが短期的な話題を集めることはありますが、
長期的に顧客を惹きつけるのはやはり品質と一貫性です。

そのため、グローバルブランドが参入する際には明確なポジショニング戦略が必要となります。プレミアム価格帯で
展開するなら、製品、ブランドストーリー、体験すべてがプレミアムであることが求められます。ミドルレンジを狙うなら、
効率的な運営と強いローカライズ戦略が競争力を維持するための条件になります。

グローバルブランドへの示唆

ベトナムのミルクティー市場に参入を検討しているグローバルブランドに向けて、以下のポイントを考慮することをおすすめします：
お茶の品質を第一に：今の消費者は、しっかりとした本格的な茶葉の風味を求めています。

• ローカライズの工夫：パッケージやデザインをベトナム文化に合わせて適応させることが効果的です。
• ブランドストーリーを伝える：茶葉の産地や背景を示し、共感を生みましょう。
• 革新と安定のバランス：新しいフレーバーは注目を集めますが、信頼できる品質こそリピーターを生みます。
• ポジショニングを計画する：プレミアム路線かミドルレンジかを明確に決め、その戦略を軸に展開しましょう。

結論

タピオカティーはもはや一時的な流行ではなく、ベトナム人の生活の一部となっています。グローバルブランドや
日本企業にとって、この市場には大きなビジネスチャンスが広がっています。しかし、成功するかどうかは
現地消費者をいかに理解しているかにかかっています。

ベトナムの消費者は冒険心が強く、新しい体験に積極的でありながら、品質とブランドの物語を重視します。
優れたお茶の味わい、明確なブランドアイデンティティ、そして記憶に残る体験を提供できるブランドこそが、
この急成長する市場で勝利を収めることができるのです。

POINTS Creativeでは、文化的な視点と消費者ニーズに基づいた戦略で、ブランドのローカライズをお手伝いします。
ベトナム市場参入にご興味ありましたら、お気軽に私たちのチームまでご相談ください。